アメリカCS博士課程への出願の記録(機械学習、自然言語処理)

2023年8月からPenn State(ペンシルベニア州立大学)の博士課程に進学することになりました。Department of Computer Science and Engineeringで自然言語処理の研究を行う予定です。これから5年間は学生をすることになる見込みなので不安もありますが、とても楽しみです。

出願について記録を残しますが、私は出願した12校のうちPenn Stateからしか合格はいただけませんでした。不合格の主な要因は研究実績の不足だと思います。在籍していたテキサス大学からも不合格になってしまったので、研究遂行能力の低さと言い換えても良いかもしれません。それ以外の点については多くの方にアドバイスを頂いて書類の作成などをしたので、参考にしてもらえる内容だと思います。

背景

私は機械学習の自然言語処理という分野の研究をしています。学部は慶應義塾大学、修士はテキサス大学オースティン校を卒業しました。出願時点で企業の研究職の内定をもらっていましたが、博士課程への進学も悩み続けていたので出願することを決めました。

出願時の研究実績は、国際学会のワークショップが2本と国際学会に提出中のものが1本で、かなり少なかったです。査読中だった論文は1月に国際学会に採択されたので、面接をしていただいた先生にはアピールをしました。

出願先

私はUT Austin、NYU、UCLA、Yale、UMich、UNC、UCSB、USC、Maryland、UMass、Penn State、UVAの12校に申し込みました。自分の研究実績が貧弱なので超トップ校は少し外しましたが、既に研究職に内定していて全て落ちても無職にはならない予定だったので、かなりチャレンジ気味に出願先を選びました。少ない人だと5校とかしか申し込まない人もいるようですが、十数校出願することも一般的なようです。あまり多いと推薦者の負担になってしまうので、出願数や出願先は推薦状を書いてもらう人と相談しながら決めるのが良いと思います。

出願先の選考については、希望する研究分野で良い研究をされている教員を選びつつ、推薦状を書いてもらう人にアドバイスをもらったり、最後に見落としを無くすために大学ランキングなどを参考にすると良いと思います。

それほどトップレベルではない大学やテニュアトラックの教員への出願を考えている場合には、どの程度の資金や計算資源があるかを調べると安心です。獲得した資金については、多くの場合は教員のウェブサイトに公開されているCVに記載されています。逆に言えば、名の知れた大学でなくても、研究環境が整っていて成果の出ている研究室はたくさんあります。

準備

日本の入試とは異なり学科試験のようなものはなく、準備としてはRecommendation LetterとStatement of Purposeがメインになります。可能であれば、出願先の教員とのコネクションを作ることができると良いと思いますが、必須ではありません。

多くの大学が3人からの推薦状を求めてきます。近い時期に指導していただいた教員が3人以上いる人は簡単だと思いますが、私の場合はNLPで直接の指導をいただいた方は2人しかいなかったので、もう1人は修士論文の副査をしていただいた方に頼みました。

Statement of Purposeは研究計画のようなものですが、色々な方が公開しているので参考にしながら書くと良いと思います。自分の場合は指導教員や所属ラボのPhD生に添削してもらうことができたので、ありがたかったです。以下のSoPなどを参考にしました。

コネクション

推薦状を書いてもらう人については、著名な人である必要はなく、自分のことを良く知っている指導教員などに頼めば問題ないようです。ただし、出願先の教員が知っている人からの推薦状の方が効果的であるのは間違いないと思うので、これは日本の大学から出願する人は少し不利になる点かも知れません。日本の教員はアメリカの大学院への推薦状を書く経験も少ないという問題もあると思います。

出願先とのコネクションについては、私の場合はUTに講演に来てくださった方が何人かいたので、何人か出願先の教員と出願前に話す機会を得ることは出来ました。有名大学では倍率が数十倍にもなるので、直接お話をできる機会があると正確に評価してもらいやすくなったとは思います。ただし、実力以上に有利になるということはないと思うので、出願先の教員とコンタクトできなくても気にしなくて良いと思います。私は知り合い全員から落とされました(笑)

出願先の教員のウェブサイトを見ると、申し込み前にしてほしいことを書いてある人が多いです。分野によると思いますが、MLの場合は出願数が多いので事前のコンタクトはせずに応募するように書いてあることが多いようです。

面接

Michigan、Penn State、UVAの3校から面接をしてもらうことができました。早いところだと12月中に連絡が来て、遅いところだと3月に連絡が来ました。おそらく、12月から1月ごろに面接の連絡が来ることが多く、採用できた人数が足りなかった研究室が遅い時期に追加の面接をしているのだと思います。

教授から個人的にメールが来てZoomなどで面接を行う形式で、カジュアルな雰囲気でした。長さは様々で20分の面接から1時間近くの面接もありましたが、内容は似ていて過去の自分の研究や博士課程で行いたい研究について聞かれました。スライドを準備するように指示された場合もありましたが、指定されなかった場合でも自分の過去の研究と博士課程で行いたい研究については説明できるように準備しておくと良いと思います。

博士課程入試の面接は、相手から評価されるというだけではなく、学生からも質問をして研究室とマッチしているかを判断する場という認識がされているようです。こちらから質問をする時間も長く取ってもらえるので、いくつか質問を考えておくと良いと思います。私は指導の方針(ミーティングの頻度や研究テーマの決め方など)や、グループとして今後の数年間で取り組みたい研究テーマなどを聞きました。

結果通知

Penn Stateは面接から1週間ほどで合格の連絡をいただきました。アメリカの大学であれば4月15日までは学生が返答を保留して良いことになっているようなので、UT Austinと面接を受けた他の2校が不合格になったことを確認してからPenn Stateへの進学を決めました。

修士からの出願について

アメリカの博士課程は基本的には5年間で、日本とは異なり学部を卒業してから博士課程に直接出願することもできます。明確なことは分かりませんが、学部からPhDに出願する人よりも、修士から出願する人の方が高いレベルの研究実績が要求されるようです。私の場合は、学部から申し込む人と比較しても実績が少なかったので実感することはできませんでしたが・・・。

感想

研究実績が少ないので覚悟はしていましたが、なかなか厳しい結果でした。ただ、何校受かっても行けるのは1校だけなので、気にせず楽しみにしようと思います。

修士課程での研究も上手くいったわけではないので、あんまり研究者に向いていないということは認識しつつあるのですが、学生の身分で自由に研究ができる最後の機会なので進学することを決めました。就職はいつでもできると思い込んでいますが、予定通りであれば30歳になっても学生を続けています。怖いですが後悔しないように頑張っていきたいと思います。

参考資料

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